内部結露について


 14.内部結露は難しい
 前項までの結露は目に見える結露、すなわち表面結露のお話でした。ここからは目にすることが難しい家屋の内部で発生する結露、内部結露についてご説明します。最初に結論を言ってしまうと内部結露を一般の方がDIYで止めるのは大変です。大工さんなど家屋のプロであれば可能かと思いますが、それでも結露の知識をある程度持ち合わせていないと的確な対策を打てません。ですので内部結露にあまり興味がなければこのページは飛ばしてもらってもいいです。
 
 家屋の内部結露の主な発生場所は壁、床下、天井です。普段余り目にすることのない場所ですから気づいていない方も多いと思います。実際、気が付かないならそれでいいという考えも正しいですが、木材が腐れる、鉄がさびるなどに影響しますから、家屋の寿命が間違いなく縮みます。

 内部結露を見つけて対策を打とうとした場合、自分の家屋の構造や生活環境、住んでいる地域などにあった対策を講じなければなりません。対策に基本はありますが、一様ではないのです。これが難しいです。
 ちなみに当社も大工さんではありませんので対策はやったことないですし、できないです。これから説明することはあくまで机上の話(理論的な話)ですので参考程度にしてください。
 








 地域によって結露の程度や発生状況は変わります。北海道と沖縄は当然違いますし、海辺と富士山の山頂でも異なります。






 「結露は会議室で起こっているんじゃない、現場で起きてるんだっ」と誰かに言われそうな・・・。


 15.見えない結露をイメージする
 内部結露に対策を打とうとした場合、結露は目に見えませんから自分の住んでいる家屋の構造から結露の発生状況を想像しなければなりません。(妄想じゃないですよ)
 内部結露の発生原因の基本は右の図のような感じです。部屋の中の水蒸気が外に向かって流れて行くとき、壁紙と木材は通過します。しかし、金属は通過できませんから、外の空気で冷やされた金属に水蒸気が触れることによって結露します。

 さて、ここで自分の家屋の壁の構造をイメージしながら水蒸気の流れを考えて見ましょう。壁の構造がどうなっているのか分からないときは建ててくれた大工さんやメーカーに聞いてみてください。

 当社の事務所の壁は、部屋の内部から「ベニヤ」→「空洞(ところどころに木材)」→「トタン」です。冬の結露の発生状況は部屋の内部のベニヤ表面にうっすらと表面結露が発生します。

 このことから考えると当社の事務所でもおそらくトタンのところで内部結露が発生していると考えられます。ベニヤ表面に発生する結露は、ベニヤに透湿抵抗(水蒸気の通し具合)が若干あって、水蒸気を通過させる前に結露を発生させてしまったものと考えられます。
 
 ベニヤ表面に発生する結露を止めるには空洞の部分に断熱材を入れればおそらく止まると思います。実際、空洞の部分には木枠が入っているのですが、その部分に結露は発生していません。(なので結露が発生すると壁に木枠の模様ができる)この木材が断熱材の代わりになって外の冷たい空気をいくらか遮断してくれているのです。
 

内部結露発生の様子



断熱材が無い壁の結露発生の様子


  16.内部結露対策
 内部結露の対策は最初に説明したとおり、家屋の構造などによって異なります。ですので今回は当社の事務所の壁を対策するものとして説明していきます。

 まず、内部結露対策の前に空洞部分には断熱材を入れて表面結露を止めます。まずはこちらの方が大事です。

 断熱材を入れると表面結露は止まりますが、内部結露にはなんら影響がないでしょう。水蒸気が断熱材を通過してしまいますし、トタンは外気に触れている状態ですので冷たいままです。

 内部結露対策に話を戻します。内部結露は壁の部材を通過して起きてしまうものですから通過させなければ内部結露を抑えることができます。
 最近建てられる家屋では当然のごとくこれらが考慮されていて、防湿シートという水蒸気を通しにくい部材を壁内部に貼り付けます。貼り付ける場所は当社の事務所で言うとベニヤと断熱材の間です。これを貼り付けておくことで部屋の内部から外に出ようとする水蒸気を止めることができます。
 貼り付ける場所を間違えてトタンと断熱材の間にしてしまうと、防湿シートが冷やされてしまうのでシート自体に結露が発生します。
 

 実はこの防湿シートの重要性がわかっていないプロの方がいらっしゃって、現場で隙間だらけで貼り付けられているのを見かけます。このシートがぺらぺらで家屋の強度には影響しないと思っているのか、意味が分かっていないのか知りませんが困ったものです。

 防湿シートだけでは水蒸気を完全に止めることはできません。透湿抵抗は100ではありませんし、隙間も必ず出ます。しかし、通常の家屋であればこのくらいのことを正確に間違いなくやっておけば、大きな問題は出ないと思います。ただし、住宅が高気密であったり、水蒸気が大量に発生する生活を送っている方などの場合は、もう一つくらい対策が必要かもしれません。

 
断熱材が入った壁の結露発生の様子


防湿シートを貼ったときの水蒸気の様子


 17.内部結露対策2
 内部結露対策をもう一段階やっておく場合には、防湿シートをすり抜けた水蒸気に対して、対策を考えなければなりません。
 簡単なのは当社の事務所で言うと、トタンを水蒸気が通過しやすい部材に変えてしまえばいいわけです。しかし、雨風をしのがなければならない外壁ですからそれは無理な話です。

 現在の家屋で考えられているひとつの方法が水蒸気を外に逃がす通気層を設ける工法です。当社の事務所で言うとトタンと断熱材の間に空気が流れる空間を作っておき、水蒸気を外に排出してしまおうということです。
 この方法でうまくいっているのか確認したことがないんですけど、水蒸気が排出される前に結露が発生してしまうような気もするのですが実際こういう工法があるのでうまくいっているのでしょう。発生したとしても外気とつながっているのですぐ乾きそうですし。

 この工法で絶対にやってはいけないのは通気層と外気を遮断してしまうことです。遮断してしまうと意味がなくなるどころか水蒸気が溜まってしまい、それがいつまでも続いて強烈な結露が発生し、最悪の場合、その部分に水が溜まることが予想されます。それが凍ったりすれば断熱材のみで熱を遮断しきれないので表面結露の原因にもなりかねません。

 こういったこった工法を行なう場合は設計者の理論と施工者の理解が極めて重要になってきます。
通気層を設けたときの水蒸気の流れ


 18.とりあえず内部結露まとめ
 当社の事務所を例にして内部結露の対策をご説明しました。予算などの都合が付けば実際に結露対策をやってみたいと思っています。

 最初に述べましたが内部結露対策は一様ではありません。今回の説明だけでは不十分かもしれませんが一応基本は説明できたかと思います。

 さらに結露対策の勉強をしたいときには、本を2、3冊読んでみてください。結構おもしろいです。
説明できなかった部分
・吸湿率
・断熱材の厚さ等
・内部結露対策を行なった場合の
逆転結露対策
・RC工法の結露
・基礎断熱
・冷熱橋
・床下/天井の結露
・べた基礎の結露
などなど


結露のページ目次

結露は面白い


1.結露は面白い
2.結露発生のメカニズム
3.温度と湿度と水蒸気

結露を詳しく知ろう

4.水蒸気の性質
5.結露発生の基本
6.表面結露と内部結露
7.逆転結露

結露発生要因
水蒸気の発生源と温度変化


8.水蒸気の発生源と対策
9.温度の変化と対策

結露発生場所
各個撃破


10.窓の結露を止める
11.押入れの結露を止める
12.棚の後ろの結露を止める
13.土間床の結露を止める

内部結露について

14.内部結露は難しい
15.見えない結露をイメージする
16.内部結露対策
17.内部結露対策2
18.とりあえず内部結露まとめ
結露とシロアリ


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