シロアリの子供と大人

日本では子供と大人の境界として20歳という年齢が設けられています。大昔は年齢にかかわらず元服したら大人と扱われる習慣がありましたが、ここではシロアリがどのように成長して子供(幼虫)から大人(成虫)へ変わっていくのかご説明します。

 シロアリはその集団の女王が産み落とした卵の状態からその生涯が始まります。卵の時期は職蟻に世話をしてもらいます。シロアリではなくアリの場合は卵からかえると幼虫時代はウジとして活動できませんが、シロアリは卵からかえったときには手足や触覚が備わっていて自ら行動することが出来ます。
 とはいうものの、生まれたばかりでは一人前に仕事をこなすことはできません。自分のエサすらも採ることが出来ず、大人の職蟻から栄養を分けてもらっている状態です。幼虫が透通った白色をしているのは自分でエサを採らず、栄養分しか体内に入っていないためです。
 その後、シロアリの幼虫は脱皮を繰り返して成長していきます。アリはウジから蛹を経て成長しますが、シロアリに蛹の期間はありません。このことからアリは
完全変態、シロアリは不完全変態の昆虫と呼ばれます。

 シロアリには職蟻と兵蟻という階級があることをお話しましたが、写真で見ると幼虫は職蟻の形態をしています。それでは兵蟻の幼虫は兵蟻の形態をしているのか、というとそうではありません。生まれた時のシロアリはみんな同じ形態をしています。何度か脱皮を繰り返し成長していく過程で職蟻になったり、兵蟻になったりします。つまり生まれたばかりのシロアリは自分が職蟻になるのか兵蟻になるのかわからないわけです。でもシロアリ自身が自ら職人になりたいとか兵隊になりたいとかという選択の余地はありません。これはその集団の女王が兵蟻の数を
フェロモンという物質を使って調整しているといわれています。

ヤマトシロアリの卵

ヤマトシロアリの幼虫
ヤマトシロアリの幼虫

シロアリの抜け殻
シロアリの脱皮殻


職蟻にくわえられて移動される幼虫。親子のようですが兄弟(姉妹)です。

 シロアリの集団には女王、王、職蟻、兵蟻の他に羽アリ、ニンフ、副生殖虫と呼ばれるメンバーがいます。
 羽アリは新たにシロアリの集団を形成するために意を決して飛び立ちます。営巣できる羽アリはほんのわずかです。
 ニンフは羽アリになる前段階のシロアリです。職蟻として活動していますが羽が生えてくるところ(翅芽)を持っています。
 副生殖虫は現在の女王が不慮の事故で死んでしまったり、卵を生めない状態になってしまった場合など生殖活動に異常が発生したときに変わりに女王となるべくして待機しているシロアリです。
ヤマトシロアリのニンフ
ヤマトシロアリの職蟻とニンフ

ヤマトシロアリの女王
ヤマトシロアリの女王
ヤマトシロアリの王
ヤマトシロアリの王
 
 シロアリの集団はほとんどが職蟻です。シロアリの衣食住いっさいがっさいの仕事をこなしているのが職蟻なので、シロアリの大人というのはこの職蟻になったときかもしれません。しかし、シロアリの大人は他の階級へと成長することができるものもいます。ヤマトシロアリではいったん職蟻に成長しそこから兵蟻になるものがいたり、羽アリになるためにニンフへと成長するものがいます。集団が分断され女王がいなくなってしまった集団では、そこから新たな女王になるべく成長する職蟻もいます。かなり融通の利く仕組みで、こういう特徴があるために何億年という長い年月をシロアリは行き続けてくることができたのでしょう。

ヤマトシロアリの階級分化の様子
シロアリの階級
@女王及び王 シロアリの集団を統率する女王は羽アリとなったシロアリがオスメスペアを組み集団を形成していきますが、不慮の事故があった場合にはGの副生殖虫が女王になります。
A卵 卵は職蟻が世話をします。
B幼虫 幼虫(子供)時代は職蟻の世話を受けます。どの階級に成長するシロアリも同じ形をしています。
C職蟻 ヤマトシロアリのほとんどが職蟻になります。職蟻になっても年齢が立たないと職蟻と決定されず、幼虫と同じように他の階級へ分化する可能性をひめています。
D兵蟻 兵蟻は自分でエサを取ることができません。幼虫と同じように職蟻から栄養をもらって生きています。
Eニンフ 羽アリになるシロアリ。
F羽アリ 新たな集団を形成するため、外界へ飛び出します。
G副生殖虫 女王または王が死んでしまったときや卵が生めなくなったときなど、生殖に不都合が出た場合に、女王や王となる言わば副女王、副王のシロアリです。

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