シロアリは珍しい? |
シロアリは「人知れず家屋を食い荒らす虫」ということで、たとえ話で「○○は日本をむしばむシロアリだ」とか「○○にはシロアリがついている」など気づかないうちに貴重な財産がむしばまれているときに揶揄されています。 確かにシロアリは大切な家屋に被害を与えてしまう昆虫ですが、人目につかないで・・・ということもそういうふうに悪役で揶揄される原因の一つでしょう。 人目を避けるように木の中、土の中で生きているシロアリは日本では北海道北部を除く広い範囲で生息しています。珍しい昆虫ではなく、健全な土壌であれば山林や公園、庭にシロアリは普通に生息しています。 シロアリの本場は熱帯地方です。そこでは土をほっくり返せば何種類ものシロアリが確認できるそうです。そういうところにくらべると日本は温帯でシロアリにとっては生息しにくいと思われる気候ですが、3億年以上前から生き続けているシロアリは様々な環境に対応すべく進化し、少しずつ生息範囲を広げてきたものと思われます。 現在世界中には2千数百種のシロアリが生息するといわれています。普通、シロアリは倒木や朽木などの木材を食べますが、シロアリの種類によっては草を食べたり土を食べたり、キノコを栽培したりと食性だけの違いを見ても様々な種類のシロアリがいます。とはいってもほとんどの種類がシロアリのふるさとである熱帯地方に集中していて日本で確認されているのは20種程度です。 さらに日本での分布を見てみるとほとんどの種類が九州以南に生息しています。やっぱりシロアリは暖かいところが好きなんですね。それでもシロアリの中には他の種類に比べて寒さに強く、北海道まで生息域を広げた種類がいます。それがヤマトシロアリです。前述しましたが北海道北部を除く日本に広く分布するというシロアリはこのヤマトシロアリです。それから茨城県を最北に生息しているのがイエシロアリです。ヤマトシロアリに比べ集団の数が多く、食害のスピードが速いのが特徴です。現在日本でのシロアリ被害額のうち、99%以上がこの2種類のシロアリによるものです。 |
ヤマトシロアリの都道府県別生息域 | |||
※標高が高い場所や河川、湖には生息していません。 |
ヤマトシロアリ 北海道北部を除く日本全土に生息するシロアリ。イエシロアリに比べて食するスピードが遅い。 |
イエシロアリの都道府県別生息域 | |||
※都道府県ごとに生息域は異なります。イエシロアリの場合、主に太平洋側の海岸線が生息域になっています。 |
イエシロアリ(兵蟻) 茨城県を最北にして生息するシロアリ。ヤマトシロアリに比べて集団の個体数が多く、家屋に被害を与えるスピードが速い。兵蟻の頭がヤマトシロアリに比べて丸い形をしている。 |
日本で家屋に被害を与えるシロアリの種類はほとんどがヤマトシロアリとイエシロアリです。これらは長い年月をかけて少しずつ生息域を広げてきたと思われますが、国際化に伴って本来日本に生息しないシロアリが他国から人為的に持ち込まれ日本に住み着いてしまった種がいます。それがアメリカカンザイシロアリと呼ばれるシロアリです。我が宮城県でも発見されました。 ヤマトシロアリとイエシロアリが生きていく上で水分はかかせません。しかし、アメリカカンザイシロアリは木材に含まれるわずかな水分のみで生きていくことが出来ます。木の切れっ端さえあれば生息できてしまうので木材や家具にひそかに生息しそれが輸入されて日本に住み着いてしまったのです。 |
アメリカカンザイシロアリの都道府県別生息域 | |||
※都道府県ごとに生息域は異なります。カンザイシロアリの場合、発見された場所で定着して生息しているとは限りません。 |
アメリカカンザイシロアリ 宮城県仙台市で見つかったアメリカカンザイシロアリ。個人で輸入したソファベッドの中に数年間生息していた。 写真提供 ハウスガード |
いずれの種類にしてもシロアリはひそかにまたしたたかに生きています。私はシロアリ屋ということで主に宮城県内ですがいろいろなところでシロアリを見ました。その時ふと思うことはこんな小さな昆虫がよくもまぁ熱帯の国からはるばるここまで来たもんだなぁ、ということです。3億年の歳月をかけて本当に少しずつ少しずつ移動し生息範囲を広げて来たのでしょう。 そんなシロアリなので家屋や庭にシロアリが見つかったとしてもそれは突然わいて出たものでも天から降ってきたものでもありません。シロアリはもともとそこにいるものです。たまたま杭が打たれたり、家が建ったりしたため今まで人目につかなかったものが、シロアリの食害や羽アリとなったシロアリが陽の目を見るようになっただけです。 |
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