カビとシロアリ
カビ
 梅雨の時期や長雨が続いた日など押入れがカビ臭くなる経験をされた方もいらっしゃると思います。カビは種類によってかなり広い温度域での生息が可能ですが、基本的には高温多湿の場所で発生します。職業がら床下にもぐる機会が多いんですが、カビ臭くなる押入れのほとんどは床下に問題があります。通常、床下は風通しを良くするため換気口が開いていますが、場所によってはほとんど空気が流れない構造になっていたりします。特に押入れ付近の基礎の形が「コ」の字になっている場合が多くあり、湿度の高い空気がいつまでも滞留し、それが押入れまで達してカビを発生させてしまうのです。
 ただ、カビは木材の腐れ(腐朽菌)とは別のもので、木材を変色はさせますが腐朽菌のように木材の強度を低下させるような劣化はおこりません。これはカビの栄養源が木材そのものではなく、木材中にわずかに含まれるデンプンなどを栄養としているためです。シロアリや腐朽菌は木材そのもの(セルロース等)を栄養とするため、木材の強度が劣化してしまいます。
 ということは床下でカビが見つかったとしても、木材に被害は与えませんので必ず対策が必要ということではありません。カビアレルギーなど、健康を害している方が居る場合は別ですが、そうでなければ多少のカビであれば様子を見てもかまわないと思います。

     
カビで木材が黒く変色してますが・・・    拭き取れば木材に異常はない
床下土壌のカビ
床下にカビが発生

床束のカビ
木材(床束)にもカビは発生する

床下の湿気対策
 空気の流れの悪い床下を改善するにはいくつかの方法が考えられます。

1.換気口を新たに設ける
 換気口を大きくしたり、新しく開けたりして空気の流れを良くします。この対策では耐震性に影響しないように注意が必要です。

2.調湿材(ゼオライトや炭など)の敷設
 床下に防湿シートを敷いてその上に調質材を敷きます。調湿材はそのごく小さな穴で湿気を吸ったり吐いたりします。また脱臭効果も期待できます。防湿シートを敷かないと地面の湿気を吸ってしまい、調湿材が飽和状態でいつまでも続くことになるので意味がありません。

3.床下換気扇を取り付ける。 ※当社非対応
 床下に換気扇を取り付けて強制的に空気を流そうというものです。当然のことながら床下で空気の流れが悪い箇所の空気を動かすように装着しないと、これまた意味がありません。

 注意が必要なのが上記のどの対策にしても外の空気を取り入れるので「
床下の湿度が現在の大気中湿度より低くなることはない」ということです。じめじめした夏季に床下だけがからっと快適ということはありえません*1。要は長期間、湿った空気を滞留させないということが目的であって、大気中の湿度よりも床下の湿度を下げることが目的ではありません。

 *1 高気密高断熱住宅といった外の空気を完全にシャットアウトした床下の場合、除湿機などを使用すると湿度は大気中の湿度よりも下がります。

換気口の配置
このような換気口の配置だと押入れ付近の空気の流れが悪くなる。しかし、このお宅の場合、押入れ以外の箇所は問題なかった。

湿気対策とシロアリ
 湿気対策はシロアリ対策ではありません。床下が乾燥していようとなかろうと水を運ぶシロアリには関係ありません。木が湿っていてシロアリが生息していた場合、シロアリが湿らせたのであって、湿っていたからシロアリが生息したわけではないのです。どんなに乾燥した床下であってもちょっと掘れば必ず湿り気が出てきます。それを利用すればすむ事なので、床下の湿気対策はあくまでもカビ対策、腐朽菌対策ということになります。


畳のシロアリ被害。このお宅は1年以上空き家になっているので周りに水気もなく、雨漏りも見られませんがシロアリの食害箇所だけが湿っていました。
 
シロアリが砂を湿らせた様子
周りは乾燥しているのに蟻道とその直下は、シロアリが水を運んだため明らかに湿っている。


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